未来に対応するオランダのサプライチェーン戦略
物流に関する知見の高さと世界に誇るインフラで知られるオランダは、欧州で最もスマートで持続可能なサプライチェーンを目指しています。次世代の技術や最新サービスの導入を検討する世界中の企業にとってオランダでの欧州事業拡大は理想的な選択肢と言えるでしょう。
- オランダのサプライチェーンの質と効率性を証明するものに世界銀行が発表する物流パフォーマンス指数があります。欧州連合（EU）最大の海上貨物輸送国であるオランダは国内の港湾ネットワークを基盤に、ここで常に上位にランクインしています。
- 事業戦略上、重要な要素となるサプライチェーンの拠点として、オランダが注目される背景には、輸入に対する独自の関税上の利点、例えばVATの納付猶予、VATリバースチャージ制度、保税倉庫規制などが挙げられます。
- オランダ国内の物流事業者のうち実にその 83% がオートメーション（自動化）とロボット工学に投資を行っており、サプライチェーン技術の向上が積極的に図られています。
自動化とロボット化、デジタル化、AIソリューション、持続可能なソリューション、新たな形態での協力関係など、オランダでは多様な分野を横断的に活用し、サプライチェーンのイノベーションが急速に発達しています。
より持続可能で、より固く世界と結びつき、この国のエコシステムの更なる強化に向けて、オランダは、主要な基盤技術（KETs）、付加価値のある物流、持続可能な物流などを得意とする外国企業を歓迎しています。
欧州を代表する物流拠点
オランダは何世紀にもわたり、国際貿易国家としての名を世界に馳せてきました。地理的にオランダが欧州の中心に位置する戦略的立地であることや、優れた市場へのアクセス性などから、輸出入はオランダを経由することで容易に行われてきました。その連結性は数字上でもよく示されており、オランダの周囲500kmの範囲には1億7,000万人の消費者が、1,000kmの範囲には2億4,400万人の消費者が生活を営み、さらにこの2億4,400万人は、EUの購買力の大部分を占める消費者となっています。
堅牢な港湾、空港、道路網から高度なデジタル接続に至るまで、世界有数のインフラを有することもまた、オランダの優位性です。高学歴で英語に長けた人材は、サプライチェーンの運営にも貢献しています。
さらに、オランダの法律、規制、政策などが他の欧州諸国への事業展開やサプライチェーンとの連携を容易にし、近隣諸国と比較しても競争力のあるコストで、物流に最適な体制が敷かれています。
サプライチェーンの付加価値を高めるため、オランダは欧州間の協力を推進させる先駆者となっています。地理的にもデジタル的にも優れた接続性を備えるオランダのエコシステムは、ゲートウェイとして西ヨーロッパ諸国における中心的な接続ハブとなってこの地域全体の機能を高めています。
「500km圏内に1億7,000万人の消費者」
サプライチェーンの連携が進むオランダのエコシステム
先進的かつ協調的なマインドセットはオランダのサプライチェーン エコシステムの特徴です。オランダ トップセクター ロジスティクスは、2050年までにサプライチェーン エコシステムの競争力、持続可能性、安全性を最大化することを目的に、イノベーションの促進に力を入れており、その重要な役割を担っています。また、オランダの物流コミュニティは連携が取られ、組織化されており、オランダ物流振興協会（HIDC）、TLN、EVOFenedexといった業界団体が、様々なプレーヤー間のネットワーキングを振興しています。さらにHIDCはこれに加えて、欧州市場に参入するグローバル企業と、オランダの物流サービスプロバイダーやインフラ事業者が良好に最適な関係を築けるよう、橋渡し役も務めています。
この他にも重要なキープレーヤーとして、TKI Dinalog（オランダ先端物流研究所）があります。オランダ先端物流研究所は、トップセクター ロジスティクスのイノベーションプログラムの一環として、オランダのトリプルヘリックス（企業、知識研究機関、政府による連携）を活用し、ソリューションを見出すことを可能にしています。同研究所は、業界間のマッチングを通じて物流研究開発における官民パートナーシップを支援するとともに、国家規模での物流に関する知識開発を促進しています。
企業が、研究とイノベーションを進める世界有数のオランダの工科大学や研究機関と、スムーズに連携できるように、その役割を担う組織として代表的な機関にはTNO（オランダ応用科学研究機構）があります。例えば、物流における持続可能性とデジタル化を推進するための新たな手法を開拓し、その知見を企業と共有するなどしています。
オランダのサプライチェーン イノベーション エコシステムは、アムステルダム国際空港スキポールやロッテルダム港といった主要な交通拠点によって一層強化されています。これらの交通拠点は、アムステルダムの Cargonaut やロッテルダムの Portbase といった革新的な港湾コミュニティの心臓部として機能し、港湾クラスター内の関係者間でのデータ共有やその他のスマートソリューションを促進、シームレスで持続可能かつ安全な航空・海上貨物フローの構築を図っています。
業界を超えてビジネスの拡大を実現するサプライチェーン
企業が事業成長を加速させるため、戦略的にオランダを拠点の選択肢に含める背景には、付加価値の高い物流サービス（内製、アウトソーシングを問わず）の存在にあります。またイノベーションの機会がサプライチェーン内だけでなく、他の産業においても無限に提供されているという点も含まれます。
例えば、オランダの生命科学と健康医療産業では、高度な物流能力と専門知識によって製品の流通、取り扱い、保管の体制が整っています。Kite Pharma はこの体制に信頼を寄せる企業の一つであり、専門性に長けたオランダの知見とアムステルダム国際空港スキポールへの近接性を活かし、繊細な細胞療法製品を欧州全域に輸送しています。ライフサイエンス・ヘルスケア事業に携わる物流サービスプロバイダーにとっても、オランダのエコシステムにサプライチェーンセンターを設けることは彼らのメリットにつながっています。この事業に特有の温度管理輸送、規制遵守、機密性の高い医療貨物の安全な取り扱いといった必須要件を満たすサービスを提供することができるからです。
他業界においてもオランダは理想的な参入場所となっています。例えば株式会社クボタのようなアグテック企業にとって、自社製品の生産と世界市場への流通は、地理的立地とオープンで協力的なネットワークが支えています。
また、配送センター向け自律ロボットを手掛ける Locus Robotics がアムステルダムに欧州本社を構える決定をした理由には、サプライチェーンの変革に向けて基盤となる技術のテストフィールドやパイロット市場としての役割をオランダが担っているからという点もありました。ソフトウェア企業の Shipsy がロッテルダムに進出したのも、AIを活用したプラットフォームを通じて欧州顧客向けに将来のサプライチェーンの変化に対応できるように支援したいという考えのもとでした。
Rhenus Warehousing Solutions – Tilburg
持続可能な物流を実現するのためのリビングラボ
2050年までに循環型経済を実現するという目標を掲げるオランダは、地政学的、環境的、規制上の様々な検討事項を網羅したソリューションの最適化に取り組み、産業サプライチェーンのあらゆる側面における持続可能性の向上に注力しています。
UPSやDHLをはじめとする世界最大級の物流企業は、オランダの広範なサービスプロバイダーとサプライヤーネットワークの一員です。オランダのエコシステムをグリーン物流のリビングラボとして活用し、カーボンニュートラルなラストマイル配送など、持続可能なソリューションの研究開発をこの国で進めています。
一方、オランダはサプライチェーンの最適化や、ゼロエミッション物流など、炭素排出量の少ない効率的で環境に優しいサプライチェーン構築に向けて、企業に豊富な機会を提供しています。
例えば、活況を呈するオランダのクリーンエネルギー産業では、様々な分野での技術開発とサプライチェーン業務との連携・同期化が実現しています。電動トラック配送の改善を目指す企業、車両向けスマート充電ソリューションを開発する企業、精密な予測、在庫管理、購買モデルのデジタル技術に注力するイノベーター、輸送時の「空車」走行距離を削減するためラストマイル配送や需要管理システムに関する先進的なアイデアを持つ企業などは、サプライチェーンのレジリエンスを高めるだけでなく持続可能性の向上にも大きく貢献しています。
持続可能な不動産開発も重要な要素と言えるでしょう。オランダ全土で、革新的なプロジェクトやグリーン物流施設が、シームレスで環境に優しいサプライチェーンを支えるインフラを構築しています。
最新のイノベーションから、特化型の高度な最先端オペレーションまで、オランダはサプライチェーンソリューションの未来を創造できる場所です。オランダのエコシステムに参加し、これを活用することで、最適なコネクションを見つけ、アイデアの可能性を広げて、欧州市場で成長しませんか。